御前落語『御神酒徳利』のあらすじ

落語なんていうものは、庶民のための娯楽ですから、普通は観客と演者の距離が極めて近い寄席で演じるものです。

高貴な方々、ましてや皇族や天皇家には縁がないものだと思っていました。

ところが・・・


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御前落語

天皇陛下にお見せする催し物を、『御前◯◯』といいます。

プロ野球では、長島選手がサヨナラホームランを打った御前試合が有名だし、天皇陛下がご覧になる相撲を御前相撲といいいます。

皇后陛下の古希の御祝いで、六代目三遊亭圓生が宮中で昭和天皇に落語をお聞かせすることになりました。
つまり『御前落語』というわけです。

出し物を選ぶ

落語の題材というと庶民相手のネタなので、粗忽者や嘘つきは当たり前で、泥棒や凶悪な罪人も出てくるし、廓噺も多いのですが、天皇陛下と皇后陛下にこんな話しをお聞かせすることは出来ません。

圓生も相当考えて題材を選んだことと思います。
宮内庁とも事前に相談したことでしょうね。

その結果、悪人が一人も出てこないおめでたい話として選ばれたのが、『御神酒徳利』でした。
このときもう一つ候補になったのが『茶の湯』だったそうです。

御神酒徳利(おみきどっくり)のあらすじ

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馬喰町に刈豆屋吉左衛門という旅籠屋があり、家宝として葵紋の銀の御神酒徳利を大切にしていました。

年末の煤取りの日に、徳利を傷めてはいけないと思った通い番頭の善六が、大切な徳利を水瓶の中に何気なく置いたのですが、慌ただしさに紛れてすっかり忘れてしまいました。

煤取りが終わって、御神酒徳利が見つからないと大騒ぎになりました。

徳利が見つからなういまま善六は帰宅したのですが、水瓶の中に置いたことを思い出しました。

女房に相談すると、算盤占いの振りをして当てたことにしたらどうかと言われました。

すぐに店に戻って、言われたとおりに算盤占いのふりをして、水瓶の中を当ててみせたのです。

それを知った大坂(当時は土偏の坂を使っていました)の鴻池の番頭が、善六の占い能力に感心して、店のお嬢さんの病気を見て欲しいと、一緒に大坂に行くことになりました。

旅の途中、神奈川の旅籠で薩摩藩士の巾着と密書が盗まれた事件が起きて、宿主が嫌疑を受けている場面に遭遇しました。

算盤占いの名人とされた善六のインチキ占いに期待され、渋々と占いを始めながら、隙をみて逃げ出そうと目論んでいる時です。

占いの名人からは逃げられないと観念した宿の女中が、庭のお稲荷さんに巾着を隠したことを善六に告白したのです。

機転を利かせた善六は、算盤占いの振りをしながら、見事に巾着と密書の場所を言い当ててみせました。

大坂についてから、鴻池でもたまたまインチキ占いが当たり、お嬢さんの病気が治りました。

そのお礼として、馬喰町に旅籠屋をプレゼントされて、善六の宿は大いに栄えたと言うことです。

算盤で成功したから、その暮らし振りは桁違いというオチでした。

六代目 三遊亭圓生


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茶の湯(ちゃのゆ)のあらすじ

御前落語では演じられませんでしたが、もう一つの候補として残ったのが『茶の湯』です。

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蔵前の旦那が隠居して、根岸に茶室付きの家を買いました。

茶室があるのだからと茶の湯を始めるのですが、作法も知らず、間違えて青黄な粉を買って来ます。

抹茶ではないので泡は立ちません。
更にむくの皮を放り込んでみましたが、不味い。

無理して飲んで「風流だなぁ」と洒落ています。
下剤を飲んでいるようなものだから、三日も経つと腹が下って仕方がありません。

誰かを呼んで飲ませることを思いつきます。

店子連中を招待するのですが、茶の作法を知らずに恥をかくのは嫌だと引っ越しようかと言い出します。

招待されたのだからと、しかたなく行ってみましが、口をつけたら不味いのなんの。
ところが、最後に本物の旨い羊羹が出て口直しに満足します。

その後、近所でも評判になり、飲んだ振りして羊羹を盗るのが流行りました。

本物の羊羹は高価なので、安くあげようとした旦那がイモをすり潰して、灯し油を塗ったお菓子を利久饅頭と称して羊羹に代えたのです。

いつものように、客人が不味いお茶の後で、楽しみのお菓子を二つ頬張ったらこれがひどくに不味い。

どこかに捨てるところはないかと探し、廊下から隣の菜畑に投げたら百姓さんの横っ面にべたっと張り付きました。

お百姓さんが一言。

「あーあ、また茶の湯だよ」

十代目柳家小三治、三代目三遊亭金馬

まとめ

落語は庶民の娯楽ですから、それこそ何でもありの世界です。

言ってみれば売春宿のの噺ですが、廓噺などは、定番演目としてたくさんの名作が残されています。
愚か者の代表として与太郎話があり、人情話や怪談話のように笑いの要素がないような落語もあります。

そのような種々雑多の演目の中から選ばれたのが「御神酒徳利」だったわけですが、いい作品を選んだと思いますよ。

天皇皇后両陛下に直接お聞かせするとしたら、わたしなら、何を選ぶかなぁ。

粗忽の使者:単純に面白いので笑っていただけるのではないかな。
金明竹:与太郎話の一つですが、繰り返しの妙で笑えます。
大工調べ:棟梁政五郎の啖呵が聞かせどころ。
ちはやふる:ご隠居のデタラメ解説で有名な一作。
壺算:ちょっと理屈っぽいかなぁ。
天災:江戸っ子のキレの良さが売りだが、天皇にウケるかどうか。

まだまだ、名作はたくさんあります。
いろいろな落語を楽しんでください。

御前落語にはふさわしくないと思いますが、個人的には「らくだ」とか「死神」とか、が好きです。


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