おすそ分けの語源から使い方を考えてみよう。

いただき物などが余ったときに、ご近所さんに分けてあげるときなどに『おすそ分け』と言いますが、なんか不思議な言葉ですね。

『おすそ』って一体何でしょうか?

おすそ分けの語源は着物の裾だった

裾とは、和服の着物の一番下の部分です。
現代では、和服に限らず、コートやズボンなどの衣服の一番下の部分を裾と言います。

着物の襟や袖など大事なところはやれないけど、重要性の低い裾の方ならあげてもいいよ。
こんな感じで、裾を分けてやる行為を「裾分け」と言い、これの丁寧語が「おすそ分け」の語源です。


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実際には、裾を分けてやることではありません。

言葉の雰囲気から分かるように、他人にものをあげるに際して、自分にとって大切な重要なところではなく、むしろ余ったところを分け与えるという意味合いです。

これから汎用化して、余分に手に入った食品や作物などを、知人に配る行為をおすそ分けといいます。

おすそ分けは下位の者から上位者には使わない

語源から分かるように、自分にとって重要なものは手元において、いわば余り物を分け与える行為です。
だから与える相手は自分と同等か下位の人に限られます。

自分より目上の人に対して物を差し上げる時は、おすそ分けとは言いません。
目上の人には「お福分け」といいます。

おすそ分けは価値が低いもの

おすそ分けは、余分なものを分ける行為ですから、一般的に高価なものに対しては使いません。

いただき物などが多量にあると、自分では有効期限内に処理しきれない物が多いですね。
自分では処理しきれないので、助けてください的な意味合いを含むことが多いです。

例えば、

  • ぶどう狩りに行って、予想以上に獲ってしまった。
  • 潮干狩りに行ったら、アサリが採れ過ぎてしまった。
  • 釣りでたくさん魚が釣れた。
  • 家庭菜園で野菜が豊作で食べきれない。
  • お客さんから頂いたおみやげの菓子が多すぎる。

このように、余った食べ物などが多く、あまり高価なものはおすそ分けの対象にすることはありません。

例外的に、

  • 宝くじが当たったとか、
  • 競馬で大穴を取った、
  • 株やFXで大儲けをしたような場合に、

ごく親しい仲間や身内に対して「おすそ分け」を使うことがあります。

おすそ分けは無計画に突然発生する

人にものを差し上げるにしても、予め予定が決まっている場合やイベントに付随する場合にはおすそ分けとは言いません。

例えば、次のようなケースはおすそ分けとは言わないのです。

  • 大学や高校の入学や卒業のお祝い
  • 成人式、還暦などの長寿祝い
  • 結婚式、金婚式のお祝い
  • 大学や資格試験合格、受賞記念、表彰、叙勲のお祝い
  • 葬儀や送別の弔慰
  • 引っ越しの挨拶

おすそ分けは、何の前触れもなく突発的に発生する現象です。
だから、おすそ分けを受ける側にも、ある種、戸惑いが生じます。

そのために、現代社会においては、おすそ分けの是非が論じられるような事態も生じています。


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おすそ分けのお返しは必要だろうか

おすそ分けを頂くことを、おすそ分けに預かるなどと表現します。

「潮干狩りに行ったら、ホンビノスという大きな貝がたくさん採れたので、食べてください」

ご近所のABCさんから突然、ホンビノスという大きな貝をいただきました。

美味しく食べたのですが、お返しをどうしようか悩みます。

日頃からおすそ分けをしている間柄であれば、お互い様なので何の問題もありませんが、ABCさんとは20年以上のご近所付き合いですが、会ったら挨拶を交わす程度で、今までこのようなプレゼントを頂いたことも差し上げたこともありません。

さぁ、どうしましょう。

ABCさんとしては、本当に予想以上に多量の貝が採れて、食べきれなくて我が家に持ってきてくれたのでしょう。

世知辛い現代において、貰い放しでことが収拾することなどありえません。
必ずお返しは必要です。(とわたしは思います)

これがまた、大変なんです。
翌日に名門菓子店の詰め合わせなどをお礼に持っていったら、わざとらしさが100%全開で、気まずくなること請け合いです。

あくまでも偶然を装ってお返しを考えなければなりません。

  • 時期:いつお返しをするか
    早すぎると嫌味になるし、おそ過ぎると非礼に当たります。
    1~2ヶ月後くらいが適正でしょう。
    .
  • 品物:何をお返しするか
    お金はまずいので、必ず物品にしましょう。
    タイミングが合えば、いちご狩り、梨狩り、ぶどう狩りなどの余剰品がベストですが、いつもいつも出来るタイミングではありません。
    特技を持っている人なら、労働でお返しするのもありです。
    (庭木の手入れとか、家の補修とか)
    田舎のある人なら、田舎の特産品が無難です。
    .
  • 口上:なんと言ってお返しをするか
    ついでの品物であることをしっかり述べましょう。
    田舎から送ってきたのでとか
    帰省したついでだったので
    などと言いつつお渡しするのが良いと思います。
    田舎案件でなければ、何のついでだったという理由を考えましょう。
    .
  • 金額:いくら位のものを返すのか
    祝儀などの場合は半返しなどといいますが、おすそ分けのお返しは、頂いたものとほぼ同等額が目安です。
    各種のお祝いなら、金品を貰う理由があるのですが、おすそ分けには、その品物を貰う合理的な理由がないのです。
    ということは、ほぼ同額を返済するのが普通です。

おすそ分け文化は崩壊したのか。

古き佳き時代には、日常的に「おすそ分け」があり、ご近所の潤滑剤になっていました。

  • 煮物を多く作りすぎたのでおすそ分け
  • 新米が手に入ったのでおすそ分け
  • 漬物が美味しく漬かったのでおすそ分け
  • 山菜を採ってきたのでおすそ分け
  • ひな祭りのちらし寿司を作ったのでおすそ分け

という具合でした。

こうして、日常的におすそ分けをしていれば、機会均等なので特別にお返しを考える必要がありませんでした。

お互い様だったのです。

ところが、現代においては、日常的なおすそ分け文化は崩壊してしまったといえるでしょう。

その大きな理由は、他人の生活に関わらない、また関わられたくないという個人主義の台頭です。
この背景には、経済成長に伴う個人の自立、プライバシーの概念樹立でもあります。

古く遡れば、江戸下町の長屋文化においては、生活は助け合うことが生活の基本であり、助け合いの精神により隣人の面倒を見るのは当然の行為だったのです。

逆に言えば、個人個人の生活基盤が現代ほど独立しておらず、何か困りごとがあれば、お隣さんに相談し(例えば借金でも)、あるいは長屋の大家さんに相談する時代でした。

現代においては、お世話をすることが個人生活への干渉と捉えられます。
また、困りごとは行政のサービスに相談しなさいという風潮です。

このような時代背景では、おすそ分けが、ある種迷惑行為にもなりかねません。

量が多くて困っています。
自分で処理しきれないので、助けてください。
お返しなど、まったく期待していません。

このくらいの切実さを全面に出して、おすそ分けをする時代なのです。

寂しいことですが、面倒を起こすくらいなら、やらないほうが良いかもしれませんね。


なんでも調べる『いろはに情報館』です。 熟年の知識と含蓄で古いものほど得意です。 ネット上にあふれる種々雑多な情報をプロのテクニックで検索して分かりやすく整理してお届けします。


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