大型の単気筒バイクの特徴とは?市販の最大ビッグシングルバイクはどれ

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大型の単気筒バイクの特徴とは

単気筒エンジンの特徴や特性については、『単気筒バイクのエンジンの構造からその性能の特徴までを詳細に解説』の記事に詳しく書きました。

では、そのエンジンを積んだ単気筒バイクは、どんな特徴を有しているのでしょうか。
また、大型単気筒バイクは、ビッグシングルとも呼ばれますが、どのくらいの排気量なのでしょうか。

単気筒バイクと多気筒バイクの住み分けは

単気筒エンジンは小型バイクに適しており、大型バイクに向きません。
単気筒エンジンと多気筒エンジンが混在しているは250ccクラスです。

以前の記事で、単気筒エンジンは大型化が難しいと書きましたが、その境目が250ccクラスなのです。

125cc以下のクラス
50ccの原付を含めて125cc以下のバイクは、現在の市販車はすべてが単気筒エンジンです。

以前は、ホンダCB125Tのような、2気筒バイクもありましたが、現在では販売されていません。

250ccクラス
次のように、3つの分類で単気筒と2気筒が混在しています。
以前は、250cc4気筒などもありましたが、環境保護のための排ガス規制により姿を消しました。

  • スクーターとオフロードバイクは、全てが単気筒バイクです。
  • 普通のオンロードバイクには、単気筒と2気筒が混在しています。
  • スポーツ性が強いSSなどでは、2気筒エンジンになります。

400cc以上のクラス
大きいクラスでは、400ccの特殊な車種で単気筒エンジンが使われていますが、一般的に2気筒か4気筒です。

過去には、800cc単気筒のバイクも販売されていました。
このバイク(DR800S)については、後半で詳しく解説します。

なぜ大型バイクに単気筒エンジンが向いていないのか。

一言で言うと、エンジン性能が悪いということです。
小型エンジンでは問題にならなかった項目が、大型化に伴って、我慢の限界を越えてしまうのですね。

具体的には、次のような項目です。

  • 一番目の理由は振動が大きいことでしょう。
  • 二番目の理由は最高出力が小さいので、最高速度が伸びないこと。
  • 三番目が音がうるさいことでしょうか。

振動が大きい
振動が一番の理由なのか、スピードが出ないことが一番なのか、よく分かりませんが、乗ってみて最初に感じる不満は振動です。

巨大な金属の塊が、シートの下からドンドンと突き上げてくるので、堪らないです。

以前、ビッグシングルとも呼べない、ホンダのクラブマンという250cc単気筒車に試乗しましたが、1時間ほど走ってその振動にたまらず、購入を止めたことがあります。

日本で最も売れている大型単気筒バイクと言えば、ヤマハSR400ですが、ナンバープレーとが割れているのを見かけます。
普通のバイクではあんなことはありませんから、振動の大きさが推し測られます。

下の写真のオーナーは、プレート割れは、SR400の持病だとおっしゃっています。

過去、市販車で最大の単気筒バイクは、スズキDR800Sです。

DR800Sのボアxストロークは、105mmx90mmです。
直径10センチを超える金属が、1秒間に100回も9センチの往復運動をするのです。

最高出力は、54PS/6600rpmです。
6600rpmであれば、毎秒110回も下から突き上げられます。

また、ハンドルから伝わる振動で、手がしびれてきます。
スズキDR800Sのオーナーは、高速走行の途中でサービスエリアに立ち寄ったときには、振動で手が震えて、箸を持つことが出来ないとレビューしています。

また、振動は人体だけではなく、精密機器をも破壊します。
DR800SのナビとETCは、2年も持たすに頻繁に交換していたという話です。

400cc以上の単気筒バイクは趣味の乗り物としても限界だし、実用的な乗り物の限度はとっくに越えていますので、量産車として普及するはずがありません。

最高出力小さくスピードが出ない
要するに回転数が上がらないので、バイクとしての基本性能であるスピードが出ないのです。

巨大な金属の塊を回転させるのではなく、無理矢理に往復運動をさせるのですから、自ずと限界がありますね。

一定方向に連続的に回転させるならまだしも、
始動⇒移動⇒停止⇒方向変換して始動⇒逆方向に移動⇒停止
慣性の法則に逆らうような運動をさせるのですから、物体が大きくなればなるほど反作用が大きくなり、回転数を上げるのが難しくなるのです。

DR800Sは800cという排気量ですが、最高出力は僅かに54馬力でした。
4気筒であれば、750ccでも100馬力を越えますから、大排気量の割に非力なのは明らかです。
ただし、低速トルクはものすごい威力ですよ。

バイクに求められる性能の重要な要素がスピードなのですが、大型単気筒バイクはスピード性能を捨てたと言わざるを得ないのです。

音がうるさい
ま、スピードが出ないという性能不足と比べれば大したことはないのですが、音がうるさいです。

でかい太鼓と小さな太鼓では、どちらが大きい音が出るか?
そんな話ですね。

閑静な住宅街から、早朝ツーリングに出かけようとすれば、暖機運転など以ての外で、とっとと幹線道路に出て行かないと、翌日から隣人たちが挨拶もしてくれなくなりますよ。

音がうるさいバイクと言えば、ハーレーダビッドソンが挙げられますが、ハーレーよりもDR800Sの方がうるさいと思います。

市販の大型単気筒バイクとは

現在(2017年8月)日本で市販されている400ccクラス以上のビッグシングルバイクは、2機種しかありません。

ヤマハSR400とスズキのビッグスクーター、バーグマン400です。

バーグマン400
バーグマン400は、これまでのスズキのビッグスクーターシリーズだったスカイウェイブの後継機種として発売されたスクーターです。
スカイウェイブ650はありませんが、スカイウェイブ400の代わりに出された製品です。
ビッグシングルの魅力を求めたバイクではないので詳述はしませんが、スクーターボディの中に、エンジンをコンパクトに隠すために単気筒エンジンを選んだのでしょう。

ヤマハ SR400

現在市販されている唯一のビッグシングルが、言わずと知れた40年近い歴史を持つビッグシングル界のエリートである『ヤマハ SR400』です。

1978年に新発売されたので、今年(2017年)で39年、来年には40年になろうというロングライフのモデルです。

人気のヒミツは、そのスタイルを含めたノスタルジックなレトロ感でしょう。
デザインもさることながら、キャブレター、スポークホイール、ドラムブレーキなどもポイントのようです。

マイナーチェンジの歴史

キャブレター

本物を追い求める人達には、現在のフューエルインジェクションモデルではもの足りないようです。
SR400はキャブレターでないと本当の味が出ないと言い出します。
音が違うともいいます。

キャブレターモデルは、排ガス規制に対応しきれず2008年に一旦生産中止になりました。

根強いファンからの希望もあり、2010年モデルとして復活したのです。
しかし、生まれ変わったSR400はインジェクションモデルでした。

キャブレターモデルは2008年が最後なので、今では10年落ちの中古車なので普通のバイクなら値がつかないような状態なのですが、SR400は新しさを求めるバイクではないので、敢えてインジェクションを避けて、古いキャブ車を求める人がいるという、不思議なバイクです。

アルミダイキャストホイール
トラディッショナルな雰囲気のSR400は当初からスポークホイールが装着されていました。

1979年に一時的にアルミキャストホイールに変更された時期がありました。

これが、とんでもない不人気でまったく売れない。
SR400にキャストホイールとは、ヤマハは一体何を考えているのか! と。

さすがにヤマハも商売ですから売れないバイクは作りません。
1983年にスポークホイールに戻され、現在につながっています。

ドラムブレーキ
1985年に、ヤマハは歴史上でもあり得ないとんでもない決定をしました。

SR400のブレーキを、ディスクタイプからドラムブレーキに退行させるマイナーチェンジをしたのです。

SR400にトラディショナルな感じを出すための選択だったようですが、安全性の要とも言えるブレーキを、わざわざ低性能グレードに変更するなど、まともな会社の方針としてはありえないことです。

ブレーキの常識として、ドラムブレーキは放熱が弱いので下り坂など連続使用に不向き、雨が降ると効き方が変わる、カックンブレーキを起こしやすいなど、デメリットがたくさんあります。
それぞれに対する最善の工夫はしたようですが、所詮ディスクブレーキの性能には敵いません。

2001年にディスクブレーキに戻されました。

生き残っている唯一のビッグシングルスポーツ

かつては、兄貴分とも言えるSR500 がありましたが、欧州の排ガス規制と日本の二輪免許制度の壁に対抗しきれず、2000年に姿を消しました。

400cc単気筒バイクがビッグシングルとしてふさわしいかどうかは若干疑問がありますが、わざわざ大型二輪免許を取ってまでSR500に乗りたいという人は少ないでしょうから、400ccでも仕方がないところですね。

はっきり言って、バイクとしての性能が低いSR400が生き残っているヒミツは何でしょうか。

まず、安いことがポイントでしょう。
ヤマハの400ccクラスは、SR400が55万円ですが、ドラッグスター400が78万円、ドラッグスター400クラシックが82万円と20万円以上も高価です。
250ccクラスのネイキッドと値段は良い勝負ですが、250ccのスクーターとなると70万円もするので負けてしまいます。

頑張らなくてもいいことが二番目のポイントです。
やっぱり、世界最速のバイクと言われるスズキの隼に乗って250ccに煽られると、妙なプレッシャーを感じるものです。
その点、SR400であれば、『ま、いいか。お先にどうぞ』と流すことが出来ます。
この心のゆとりがSR400の魅力ではないかと思います。

バイクに乗っている感が強い
エンジン音は紛れもなく、誰が聞いてもバイクの音がします。
跨がって走り出すと、尻を突き上げる振動が強くて、バイクに乗っていることとを再認識させられます。

必ずしも快適とは言い難い「音」や「振動」が、バイクに乗っている者にしか感じられない満足感をもたらしてくれるのです。
もしも、何の音もしないで無音のまま、振動もなく移動するツールがあっても、バイク乗りはそれを選ばないでしょう。

そんな、バイクの味を最大限に提供してくれるのがビッグシングルのSR400なのです。

スズキ DR800S

現在は販売されている国産バイクの中では、最大の単気筒バイクはSR400ですが、過去に遡ってみて、最大の単気筒バイクは何でしょうか。

市販されたバイクでは、最大の単気筒バイクがDR800Sらしいです。
どうもはっきりした根拠がつかめなかったのですが、他に資料が見つからないので、DR800Sが史上最大の単気筒バイクということにしておきます。

単気筒エンジンの大きさの実用的限界が800ccくらいだと言われいる中で、限界の商品を作ってしまったスズキに敬意を表したいと思います。

1988年からDR750Sとして販売開始され、1991年からは800ccにボアアップされて、DR800Sになりました。

怪鳥のくちばし
上の写真で分かるように、フロントライトの下にくちばしが突き出ていますね。
最近のアドベンチャーツアラーに付いている人気のくちばしです。

BMWのR1200GSがオリジナルのように言われていますが、実は、このDR800Sの前身であるがDR750Sが最初のようですよ。

上の図は、カタログの一部抜粋です。
『怪鳥をイメージしてデザインされたというフォルムも見直しが図られ、・・・』と記載されています。

『ファラオの怪鳥』と名付けられ、タンクからフロントカバーまで伸びるくちばしが与えられていました。
この大胆なデザインは、イタリアの奇才ジョルジェット・ジウジアーロの手によるモノだそうです。

一方、R1200GSのくちばしを調べてみると、R1200GSの原型であり、初めてくちばし状の物がついたモデルがR1100GSですが、この発売は1994年ですから、DR800Sよりも後のことなのです。

仕様は無茶苦茶
仕様は、はっきり言って常識はずれの数値ばかりで、とてもバイクのスペックとは思えません。

800ccで54馬力って、数字だけをみると非力な感じを受けるかもしれません。

高速道路で法定速度は問題なく走るし、追い越し加速も十分こなしますが、最高速となると140キロあたりが限界で、それ以上は息つきをしてシンドイようです。

数字だけを見て非力と思ってはいけません。
中低速トルクがものすごいので、普通のバイクのつもりでアクセルを捻って発進すると、確実に前輪が浮きます。
新車購入初日に転倒にもなりかねません。
800ccシングルを侮ってはいけませんよ。

燃費は18km/L~20km/L程度なので、あまりいいとはいえませんね。
でも、タンク容量がリザーブを含めて29リットルもあるので、無給油航続距離は軽く500kmを超えます。

すごい振動
直径10センチを超えるピストンが90mmの距離を毎分6,600回も往復するのです。
ものすごい振動で、車体がバラバラになりそうです。

振動のエピソードで、高速走行中にサービスエリアで箸が持てなくなる話を先に書きましたが、実はもっと深刻な問題があるのです。
サービスエリアに駆け込む最大の目的が、トイレであることはしばしば経験することですね。

DR800Sで高速走行中に、サービスエリアのトイレに駆け込むと、男子一生の不覚となるそうです。
男子がトイレに入ると立ち姿で用をたすのですが、手が震えてどうにも意のままにならず、目的物体を捕捉できないまま放射すると大変なことになってしまうのです。

それほど、振動が激しいというエピソードでした。

番外編 超大型単気筒バイクの記録競争

伊達や酔狂でという言葉がありますが、まったくの伊達や酔狂で大型単気筒バイクを作った人がいます。

ドイツのフランツ・ランガーさんは1998年に1000ccの単気筒バイクを作りました。
その後、別の人が1440ccの単気筒バイクを作って記録を更新されてしまいました。

画像出典:https://lrnc.cc/_ct/16846170

負けてたまるかとランガーさんが作ったのが2000ccの大型単気筒バイクです。

セルモーターがないので、エンジン始動はキックか押し掛けだそうです。
キックは、ケッチンが怖いですね。

動画がありますのでエンジン音も確かめてみてください。。

しかし、上には上がいるもので、クラウス・ミースさんという人がなんと3034ccの単気筒バイクを作りました。
その名はHG3000。
どうやらこれが世界一大きな単気筒バイクのようです。
あっ、もちろん市販はしていませんから、欲しかったら作るしかありませんね。

単気筒バイクは、小型でシンプルな構造が「売り」だったのですが、こうなるともう、どうしようもありません。
\(^o^)/ お手上げ、バンザイ


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