『戸籍』がある限り『本籍地』は必要だと、間違った認識の方が多数いらっしゃいますので、その勘違いを改めていただきます。
『戸籍』と『本籍地』は切り分けて考えることができるのです。
まず『戸籍』のことを理解してください。
『本籍』を論じる前に『戸籍』について、確認しておきましょう。
『戸籍』って、あなたが日本人であることを証明する唯一の公文書なのです。
『戸籍』がなければ、義務教育を受けることができません。
国民の権利である選挙権も行使できません。
その他にも、パスポートを取ったり、婚姻届をしたりする場合にも戸籍が必要です。
目次に戻る戸籍には、なにが書かれていますか。
- あなたの名前はなんというか
- いつ生まれたのか
- どこで生まれたのか
- 男なのか女なのか
- 父親はだれ、母親はだれ
- いつ結婚したのか
- 配偶者はだれ
- 子どもはいるのか
などなど、あなたのプライベート情報がびっしり書かれている書類です。
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戸籍はどこにありますか
これほどのプライベート情報が記録されている『戸籍』は、あなたのものです。
でも、
- 自分で持って歩くことはできません。
- 金庫に入れてしまっておくことも出来ません。
勝手に改ざんできないように、また紛失しないように、公の機関に預けておく決まりになっています。
公の機関とは、具体的にいうと「市区町村役場」なのです。
あなたは、その戸籍をどこの「市区町村役場」に預けていますか?
「戸籍を預けている所」が本籍地なのです。
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本籍地の本質的な意味は
本籍地ってなぜ、必要なのでしょうか?
目次に戻る戸籍を預けておくところ
『戸籍』は非常に大切な書類(記録)ですから、次のようなことがあっては困ります。
- 改ざんされた
- 紛失した
- 誰かに勝手に見られた
あなたの戸籍が、改ざんされないように、紛失しないように、勝手に他人が見ないように、しっかり管理してくださいと、あなたが戸籍を預けるところを決めなければなりません。
本籍地とは、単純に戸籍を「預けておくところ」であり、それ以上の意味はありません。
日本国内で番地があればどこでも良いのです。
本籍地とは、生まれたところ(出生地)や育ったところではありません。
実家(親の住居)の場所ではありません。
現住所ではありません。
ずっと前のご先祖様が本籍を作り、そのまま受けついていることも多々あります。
最初の結婚のときに住居を本籍地にして、そのまま継続(放置)している方も多いのです。
本籍地は自由に移すことが出来ます
本籍地を移動することを「転籍」と言います。
転籍届けには、理由を書く必要はありませんし、結婚してから何日以内とか制限事項もありません。
あなたの戸籍を預けておくところが、遠くて不便だと思ったら、近くに移すことが出来ます。
本籍地の番地が覚えにくいと思ったら、分かりやすい番地に移すことが出来ます。
一度、移してみたが、やっぱり気に入らないと感じたら、何回でも別の場所に移すことが出来ます。
目次に戻る移動した後には「除籍」が保管される
移動した後の本籍地には、「戸籍」の書類を「除籍」という形で、移動から80年間は記録が保管されています。
相続などの問題が発生した時には、その人が生きていたすべての期間の戸籍を遡って「除籍謄本」を揃えなければならないので、転籍の回数が多いと手続きが煩雑になります。
このようなデメリットもあるので、不必要な転籍は控えたほうが良いでしょう。
実際に「転籍」を行う人は、とても少ないのです。
目次に戻るこんな本籍地もあります
本籍地は日本の領土で番地があればどこでも構いません。
すごいところに本籍がおかれていることもあるのです。
皇居を本籍地にしている人が2100人。
大阪城は800人。
阪神甲子園球場には699人
東京ディズニーランドの所在地の人もいるとか
ちなみに、富士山の山頂は、山梨県と静岡県の境界未定地なので番地がありませんから、本籍を置くことは出来ません。
本籍地は必要か
目次に戻る膨大な紙の資料を取り扱う
明治時代のことを考えれば、本籍地が必要だったのです。
明治の始まりの頃の日本の人口は3500万人でした。
その人達の『戸籍』(紙の書類)を集中的に1ヵ所で管理するとなると、膨大な保管場所が必要になります。
コンピュータがない時代のことですから、書類を探しだすだけでも大変です。
しかも、同姓同名の名前がたくさんいたら、どの人か区別がつきません。
田中実さんという同姓同名が最も多く、全国で2600人以上もいるそうですが、
「田中実の戸籍抄本を交付してください」
と依頼を受けても、1ヵ所に2600枚もの田中実さんの戸籍が集まっていたら、どの田中実さんなのか分かりませんね。
そのような膨大な紙の書類を1ヵ所で取り扱うことが実質的に不可能であるという物理的な理由から、市区町村に管理を委ねた制度が必要だったと推測できます。
明治時代の技術水準では、集中管理などという概念すらありえないことだったのでしょう。
目次に戻る家制度という考え方
また、明治政府は、国民を個人個人ではなく『家』という概念で管理していました。
そのために『戸主』という制度を設けて、強い権限を与えていたのです。
ですから、個人の特定のためにはまず戸主を探して、その家の家族という形で調べる方法だったのです。
この時に、戸籍がどこにあるかが重要な要素であり、本籍の重みがありました。
しかし、戦後の民法改正によって「家制度と戸主」が廃止されたので、本籍の役割が著しく低下したのです。
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オンラインによる情報管理ならば
現代は、オンラインによる情報管理技術が発達しているので、明治時代のように紙の管理に悩まれることはありません。
例えば総務省の下に「戸籍管理庁」を新規に作って、全国の戸籍を一元的に管理することは技術的には簡単にできるはずです。
国民の戸籍を全部取りまとめて、戸籍管理庁に預けることになるわけです。
そうなれば、本籍という概念は必要なくなります。
しかし、そう簡単には、物事は進まないでしょう。
「本籍」を失うことに情緒的に反対する人がたくさんいるだろうし、付随する多岐にわたる法整備も必要になります。
また、本籍は、戸籍のインデックスの役割をしてたので、これに代わるインデックスが必要になります。
全国には2600人の田中実さんがいますが、本籍がさいたま市の田中実さんといえば、かなり限定されます。
この区分機能が、現在の本籍地の役割の大きな部分なのです。
本籍を廃止するなら、マイナンバーのような、国民背番号制度が必要になります。
例えば、マイナンバーを国民背番号として利用すれば、2600人の中から一人の「田中実」さんを特定できます。
むしろ、名前さえ必要とせず、No.123456789012だけで、田中実さんの戸籍が引き出せることになってしまいます。
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まとめ
- 本籍地とは、あなたの戸籍を預けて管理してもらう場所(市区町村)のことです。
- あなたの、生まれや育ち、両親や先祖とはなんの関係もありません。
(関係している本籍地が多いのも事実です) - 気に入った場所に何回でも異動することが出来ます。
(本籍地を異動する人は少ないです) - 本籍地が果たす役割は、全国民の戸籍を分類する区分表(インデックス)です。
(『田中実』では誰だか分からないが、『□△村の田中実』で個人が特定できます) - 情報技術(IT)が進歩した現代においては、インデックスの役割は薄くなり、技術的には本籍地を廃止することが出来ます。
(ただし、国民背番号制度が必要になります) - 本籍地に特別の思い入れをしている人が多いので、廃止することは困難です。
国民総背番号制度に反対する人も多いようです。 - 関連する法律が多岐にわたっているので、法整備もおおごとになります。
- 本籍地制度が国民に不利益を与えているとは言えないので、当分はこのまま継続するでしょう。
本籍を調べていたら、
- 『戸籍』と『住民票』との役割の違い。
- 『戸籍』ではなく『個籍』に改正すべきだ。
など、関連する面白いテーマが浮かび上がってきましたが、この記事の主旨から外れますのでここでは述べません。
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コメント
戸籍広域交付制度を見て、いよいよ本籍地が形骸化したなど思い、こちらのサイトを見つけました。マイナンバーカードによるコンビニ交付の時点で、本籍地は意味がないのでは、と思っていましたが、本籍地を保持したまま戸籍法が改正されていたとは…という感じです。効率化という方向だけでは物事が進みにくいのですかね。