マラソン距離測定方法の実態は、かなりのアナログ手法だった。

フルマラソンの距離は42.195kmと定められていることは、誰でも知っていることですね。

この距離の由来は、ギリシャ軍の兵士が勝利伝達のために走った距離だと言う説がありましたが、どうやらウソのようです。

「昔、ギリシャ軍の勝利を知らせるため、マラトンからアテネまで兵士が走った」

この距離は約36キロなので、マラソンの距離にはだいぶ足りません。

2177012

Wikipediaの解説によると、第4回ロンドンオリンピック時の走行距離をそのまま採用したと言うことのようです。

ともかく、長い距離なので、正確に測る技術が極めて難しいのです。

マラソン距離の測定法の実態は

日本陸上競技競技連盟は、「平成○○年日本陸上競技連盟競技規則」を出版しており、これが陸上競技のルールブックになります。

マラソンの距離測定は「長距離競走路ならびに競歩路公認に関する細則」で定められています。

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コースのどこを測定するのか

走る道路が決まっても、道路の真ん中を走るのか、端を走るのかのライン取りによって距離が異なってしまいます。

そこで、道路の計測の際には、道路上のどこを測るのかが決められています。

  • 基本のラインは歩道側の端から30cm車道側
  • 左カーブは歩道側の端から30cm車道側
  • 右カーブなら道路のセンターラインから30cm内側
  • S字カーブなら指定点を結ぶ最短ライン

つまり、測定ラインは下の図の赤い線になります。

20150428b

したがって左カーブコーナーでは歩道ギリギリに走ればそれだけ実走行距離は短くなるし、車道側を走れば長くなります。

ランナーがどのラインを走るかは勝手ですが、コースとしての基準の長さは、図の赤い線で測定します。

図のようにカーブがある箇所では、道路幅全体を使うので、条件によっては、道路を封鎖しないと測定できません。

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どんな方法で測定するか

計測方法は「陸上競技審判ハンドブック」で説明されています。

それによると、

  • ワイヤーロープを用いる方法
  • 自転車にカウンター計を取り付けて計測する方法

この二つの方法のどちらかです。

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ワイヤーロープによる測定

直径5mm、長さ50mの鋼鉄製のワイヤーをメジャーとして、尺取り虫のように測ります。

42.195kmですから50mで割返せば、844回測定することになります。

50m計測を844回繰り返す作業ですからどうしても誤差が出ます。
しかも、歩道から30センチ離れたラインを維持しなければなりません。

1回の測定に5分かかるとして、70時間を超えるという長時間の作業です。

20150429a(写真提供:日本体育施設株式会社。クリックすると大きく表示されます)

この作業に必要な人手は、数十人と車両も数台必要で大変な大掛かりな作業なので、プロの集団でなければ、とても測定できるものではありません。

しかも通常は車が走っている道路ですから勝手に計測できません。
当然、警察の許可を取って道路の一部を専有して計測が行われています。

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自転車による測定

もう一つの計測方法は、国際陸連で定められたカウンターをつけた自転車を使用します。

カウンターの目盛りは、自転車が7センチほど進むとカウンターが一つ進むのですが、気象条件や乗る人の体重などによって変わってきます。

そのためワイヤで測った400mの直線を何度か走って、1kmでカウンターの目盛りがいくつ進むかを計算して、測定前に検定をします。

20150506d

国際陸上競技連盟公認公式計測員の資格を持つ人が中心になって、全行程を自転車で走ってカウントを計測します。

日中では、車通りが多いので、夜間や早朝に計測することが多いのです。

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人員とお金

しかも、スタッフは頭数さえ揃えればいいというものではありません。

国際陸上競技連盟公認公式計測員の資格を持つ人でなければ、計測することが出来ません。

最後の仕上げに陸連に公認してもらわなければなりません。
検定をパスして合格すると公認料を払います。

フルマラソンコースの場合、

  • 新設時に20万円ほど
  • 2年ごとの継続時に10万円ほど

が必要です。

どちらにしても、アナログ的な大変な作業が行われているのが実態です。

しかし、GPSの制度も飛躍的に高まっている現状をみると、今後は、衛星画像やGPSなどのデジタル計測技術を用いた測定が公認される時代が近づいていると思います。

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横浜マラソン2015の距離不足事件

2015年3月15日に開催された「横浜マラソン」の距離が、フルマラソンの規定である42.195kmより186.2メートル短かったと言う事件がありました。

横浜市と神奈川県が主催の筆頭であり、文部科学省後援の立派な大会で、どうしてこのようなお粗末な事態が生じたのでしょうか。

その謎を探ってみましょう。

1分55秒の解説動画がこちらです。

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186.2メートルは時間にするとどのくらい

フルマラソンの世界記録である2時間03分で走るとすれば、186.2メートルは32.6秒になります。

世界最高記録が32.6秒も短縮されたとなれば世界の大ニュースですから、許容される範囲ではありませんね。

市民ランナーでは4時間を切れば立派と言われますが、キロペースを5分(完走3時間半)に設定している人にとっては、ほぼ1分(56秒)の短縮になります。

自分でタイムを測っていた市民ランナーの中には、自己最高記録だと思って喜んでいた人もいたでしょう。

ところが、大会4日後にコースの公認が取れなかったと発表されて、冷水を浴びせられた気持ちでしょうね。

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どこまでの誤差が許されるのか

フルマラソンで許容される測定誤差は、0.1%です。
つまり、42メートルです。
正確には、42メートルと19.5センチですが(^_^;)

プラス・マイナス42メートルではありませんよ。
距離が短くなるマイナスは、まったく認められません。

42メートル長い誤差までなら認められます。

だから、どこのコースでも、若干長めに余裕を見込んでいます。

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なぜ距離不足が分からなかったのか

大会組織委の発表では、

  • 計測は事前に3回行なった
  • メーター付き自転車2台で計測した
  • 首都高部分は自転車で走れないので地図上のみでの計測だった
  • 当日の朝、実際に全コースを自転車で計測した
  • 競技終了の午後3時頃に計測ミスが判明した

ということです。

ポイントは、コースの一部(約11キロ)に組み込まれた首都高湾岸線で、自転車による実車測定ができなかったことにあります。

「首都高速を人間の足で走る」

これが目玉のウリだったのですが、裏目に出た格好です。

高速道路には、普段は歩行者も自転車も立ち入りができないので、実際に測定することが出来ないのでした。

しかも、目玉商品だったはずの「首都高コース」は、自動車用のコーナーの傾きがきついので、足首が斜めになるなどと、出場ランナーに大不評でした。

横浜マラソン組織委では、
「大会後に日本陸連の公認コースに申請予定」
と参加者に伝えていましたが、結果的にウソをついたことになってしまいました。


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コメント

  1. 杉原巨久 より:

    距離測定方法はどのブログでも出ています。が、一方コースだったら簡単ですが折り返しコースの場合折り返し点はどうやって決めるのでしょうか。 競技場のゴール地点で丁度42.195キロにするには片方のみ測定法では何回も折り返し点を試行錯誤しないと決まらないと思うのですが。 スタート地点とゴール地点両方から測定しないと折り返し点は簡単には定まらないと思うのですが。 ご存知の方ご教示下さい。