罰金と科料の違いは何でしょう。罰金の最高額はいくら?

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日本の刑法では、

◆身体的な自由を束縛をする自由刑
◆財産を召し上げる財産刑

があります。
(死刑は特別なので除外しました)

自由刑は、懲役、禁錮、拘束です。
財産刑は、罰金と科料です。

同じ財産刑でありながら、罰金と科料はどのように違うのでしょうか。

罰金や科料判決によって、前科になるのでしょうか。

罰金の最高額は、どのくらいなのでしょうか。

(この記事では、日本の法律について記載します。外国の例は含みません)

法律の条文での表現は

罰金と過料の適用について
法律にはどう書かれているかご存じですか。

2つの例を提示します。

道路交通法
第百二十一条
次の各号のいずれかに該当する者は、二万円以下の罰金又は科料に処する。

道路交通法では、『罰金』と『科料』が選択刑として規定されています。

金融商品取引法
第百九十七条
次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

金融商品取引法では、懲役と罰金が選択刑として規定されています。

2つの例を重ねてみると「懲役・罰金・科料」は、軽重の差はあるものの同列の刑罰とみなされているのです。

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罰金と科料は金額が違うだけで、どちらも前科になる

先に条文を示したように
実は、罰金と科料は、金額が違うだけで、法律的な意味は同じ刑罰なのです。

金額が1万円を超えるものを罰金と称し、法律では必ず上限金額を明示しています。

これに対して科料には、金額が書かれていません。

科料は、1000円以上1万円未満と決まっているから法律上文に書く必要がないのです。

どちらも、
刑法による処罰なので前科として扱われます。

罰金以上の刑を受けた者は、
一定期間、市町村役場に備えられる犯罪人名簿に登載され、同時に検察庁保管の前科調書に記載されて前科となります。

科料に処せられたものは、
市町村役場の犯罪人名簿には記載されませんが、検察庁保管の前科調書には記載されて前科となります。

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罰金と科料の判決実数はどちらが多い

最近10年間の科料と罰金の判決件数を下表に示しました。

科料が年間およそ3千件なのに対して、罰金の判決は30万件以上もあり、100倍以上も罰金刑が多いのです。

2013年を例に取れば、罰金刑のうち、道路交通法違反が213,291件(68%)を占めています。

科料の件数 罰金の件数
2004年 3,014 743,553
2005年 2,829 689,972
2006年 2,868 650,141
2007年 2,842 533,949
2008年 2,507 453,065
2009年 3,086 427,600
2010年 3,067 401,382
2011年 2,964 365,474
2012年 2,868 344,121
2013年 2,559 306,316

罰金の規定は、たくさんの法律に記載されており、各種の行政取締法規の刑罰や経済秩序の維持のための刑罰として、適用範囲が拡大されています。

一方、
科料は最大でも1万円未満であり、実質的には9000円なのです。

現代において、9000円では経済的な重みが薄く、刑罰による制裁の意味を失っているために、
減少しているようです。

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罰金と科料の最高金額はいくら(個人)

科料は、千円以上1万円未満と定められていますから、実質的な最高額は9,000円です。

一方、罰金は、最大の場合は最高額の規定はありません。

しかし、刑罰の重さを考えると、べらぼうに高額な罰金には意味がありません。

なぜならば、
罰金を数千万円とか数億円とかに引き上げるほどの悪質な罪であれば、禁錮刑なり懲役刑に処するのが普通ですから、罰金の最高額は、自ずと制限されるのです。

しかし、最近では、罰金金額を引き上げる動きが多く見られます。

迷惑防止条例違反の痴漢行為の罰金は最高50万円、再犯だと最高額は100万円になります。

上限を1,000万円とする罰金規定もあります。

◆覚せい剤取締法
◆銃砲刀剣類所持等取締法
◆化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律
◆出入国管理及び難民認定法

などです。

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罰金の最高額は無制限(法人)

生身の人間の場合は、自由を束縛する懲役刑や禁錮刑が、罰金よりも重い懲罰になりますが、法人の場合は、懲役刑が存在しません

比較的近いのが、営業停止処分でしょうが、これは行政罰であり、刑法に定める刑罰ではありません。

そのため、法人に厳しい刑罰を与えようとすると、罰金の金額を増額するしかないのです。

高額な罰金上限規定の例です。

◆私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律では1億円
◆証券取引法や金融先物取引法では3億円
◆金融商品取引法では7億円
◆脱税では、脱税額と同額の罰金を課すことができるので、事実上無制限

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まとめ

  • 罰金と科料は実質的に同じ罰です。
  • どちらも前科が付きます。
  • 罰金件数は科料の100倍以上多い。
  • 科料の最高額は1万円未満。
  • 罰金の最高額は、個人なら1000万円
  • 罰金の最高額は、法人なら7億円(無制限もある)

過料については、下の関連記事をご覧ください。

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科料と過料の違いは何か?それぞれの実例を教えます。

いまどきの経済環境において、1万円にも満たない科料では、制裁金としての意味は
殆どなくなっています。

その反面、罰金刑は金額を増やしながら、適用範囲が拡大しています。

おもしろいと思ったのは、法人の罰金がべらぼうに拡大しているのは、懲役刑がないからなんですね。
言われてみれば、なるほどですが、ちょっと気が付きませんでした。


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